黒字なのにお金がない会社の共通点|現金が戻るまでの日数(CCC)

監修:税理士法人Aoi Plus(公認会計士・税理士)

黒字なのにお金がない会社の共通点|現金が戻るまでの日数(CCC)

この記事の要点

  • CCC(現金が戻ってくるまでの日数)は「売上債権回転日数+棚卸資産回転日数-仕入債務回転日数」で計算します
  • CCCが長いほど会社が立て替えるお金が多くなり、利益が出ても預金が増えにくくなります
  • 取引条件が同じでも、売上が増えると運転資金も同じ割合で増えます(例:売上30%増なら、運転資金も30%増)
  • CCCを縮めるなら、効果が大きいのは入金を早めることです(例:年商1億2,000万円なら、10日早めて約329万円)
  • 増収の年は、増加運転資金に加えて納税額と翌期の中間納付も増えるため、資金繰りが二重に苦しくなります

「利益が出ているのに、なぜ預金が増えないのですか」。決算のご報告の場で、経営者の方からよくいただくご相談です。

黒字なのにお金が増えないのはなぜ?

利益の計算には出てこないところで、お金が出ていくからです。設備投資、借入金の元本返済、配当のほか、見落とされやすいのが仕入代金を払ってから、売上の代金が入るまでの時間差です。この間、会社は仕入や在庫の分を自分のお金で立て替えています。

この時間差を日数で表したのが CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル/現金循環化日数)です。CCCが長いほど、同じ売上でも多くの運転資金(商売を回すために立て替えておくお金)が必要になります。

この記事では、次の会社を例に通しで計算します。

項目数字
月商(税抜)1,000万円
年間売上高1億2,000万円
年間売上原価(原価率70%)8,400万円
売上債権回転日数60日
棚卸資産回転日数45日
仕入債務回転日数30日

CCCはどう計算する?

CCC = 売上債権回転日数 + 棚卸資産回転日数 - 仕入債務回転日数 で計算します。例の会社は 60日 + 45日 - 30日 = 75日です。

3つの日数の意味と計算式は次のとおりです。

日数意味計算式
売上債権回転日数売った代金が入金されるまでの日数(売掛金・受取手形)売上債権 ÷(年間売上高 ÷ 365)
棚卸資産回転日数仕入れた商品が売れるまでの日数(在庫)棚卸資産 ÷(年間売上原価 ÷ 365)
仕入債務回転日数仕入代金を支払うまでの日数(買掛金・支払手形)仕入債務 ÷(年間売上原価 ÷ 365)

つまりCCCは、会社がお金を立て替えている日数です。

立て替えている金額はいくら?

例の会社では約2,318万円です。売掛金・在庫・買掛金の残高から計算します。

項目計算金額
売上債権(売掛金など)1億2,000万円 ÷ 365 × 60日19,726,027円
棚卸資産(在庫)8,400万円 ÷ 365 × 45日10,356,164円
仕入債務(買掛金など)8,400万円 ÷ 365 × 30日▲6,904,110円
立て替えている金額(運転資金)売上債権 + 棚卸資産 - 仕入債務23,178,082円

この金額が増えた年は、増えた分だけ利益が預金に回りません。

入金まで60日は長い?

「月末締め翌月末払い」が中心の会社なら、やや長めです。この条件だと、月初の売上は約60日、月末の売上は約30日で入金され、平均すると約45日になるからです。自社の日数が45日を大きく超えるなら、入金の遅い取引先や請求遅れがないかを確認しましょう。

業種によって目安は違う?

違います。現金売上の多い小売業・飲食業は、仕入代金を払う前に売上の代金が入るため、CCCがマイナスになることもあります。工期の長い建設業や受注生産の製造業では、100日を超えることも珍しくありません。他社と比べるより、自社の過去と比べるほうが役に立ちます。CCCが伸びているなら、回収の遅れ、在庫の滞留、仕入代金の支払いが早くなった、のどれかが起きています。

売上が増えるとお金が減るのはなぜ?

売上が増えると、売掛金も在庫も同じ割合で増え、立て替えが膨らむからです。このとき追加で必要になるお金を増加運転資金といいます。

この会社の売上が30%増えたとします。取引条件(60日・45日・30日)は変わりません。

項目現状売上30%増
年間売上高1億2,000万円1億5,600万円
売上債権19,726,027円25,643,836円
棚卸資産10,356,164円13,463,014円
仕入債務▲6,904,110円▲8,975,342円
運転資金23,178,082円30,131,507円
増加運転資金―6,953,425円

売上が30%増えると、立て替えが約695万円増えます。増えた利益が入ってくる前に、このお金を用意しなければなりません。

大口受注で仕入を増やしたところ、入金より先に支払いが来て、お金が足りなくなる。これが黒字倒産(利益は出ているのに、資金が尽きて倒産すること)の典型です。

急成長の前には増加運転資金を見積もり、自己資金か借入で手当てしてから動くのが原則です。「増収に伴う増加運転資金」は、金融機関にも理解されやすい借入理由です。

CCCはどこから縮めればいい?

入金を早める → 在庫を減らす → 支払いを延ばすの順に考えます。支払いを延ばすのは、取引先との関係や法律の制約があるため、最後の手段です。

10日ずつ縮めた場合の効果です。

打ち手戻る現金
入金を10日早める約329万円(1億2,000万円 ÷ 365 × 10日)
在庫を10日分減らす約230万円(8,400万円 ÷ 365 × 10日)
支払いを10日延ばす約230万円(8,400万円 ÷ 365 × 10日)

入金を早める

効果が最も大きく、自社の努力で進めやすい打ち手です。

  • 新規の取引先とは、支払サイト(締め日から支払日までの期間)を短く決める
  • 請求書は締め日の翌日に出す
  • 着手金・中間金を設定する

意外に多いのが請求漏れ・請求遅れです。毎月、売掛金の年齢表(残っている期間ごとの売掛金の一覧)で、3か月以上動いていない残高がないかを見ておくと安心です。

在庫を減らす

在庫は、現金が形を変えたものです。売れずに残っている在庫の分だけ、現金が寝ています。在庫の減らし方は、倉庫に眠っている現金で詳しく説明しています。

支払いを延ばすときの注意

一方的な支払いの延長は、取引先の信頼を失います。また、下請法は2026年1月1日から取適法(中小受託取引適正化法)に変わりました。対象となる取引では、手形による支払いが禁止されました(公正取引委員会 取適法、改正内容の解説)。自社が発注側になる取引では、支払条件が法律に沿っているかを先に確認するようにしましょう。

増収の年に気をつける支払いは?

税金の支払いです。増収で利益も増えた年は、増加運転資金と増えた納税が重なりがちです。

法人税は、決算日の翌日から2か月以内に申告・納付します(国税庁 主な国税の納期限)。前期の税額をもとにした中間納付も、次の基準で発生します(法人税法71条(e-Gov法令検索))。

税目中間納付の基準中間納付の回数
法人税前期の法人税額 ÷ 12 × 6 が10万円超年1回
消費税前期の確定消費税額(国税分)が48万円超〜400万円以下年1回
消費税同 400万円超〜4,800万円以下年3回
消費税同 4,800万円超年11回

消費税の基準額に地方消費税は含みません(国税庁 タックスアンサー No.6609)。消費税の確定申告・納付も、原則は決算日の翌日から2か月以内です(国税庁 タックスアンサー No.6610)。

納税額が増えれば、それをもとに計算する翌期の中間納付も増えます。消費税は、税額が基準を超えると中間納付の回数も増えます(年1回から年3回など)。決算予測の段階で、次の3つを月別の資金繰り表に入れておきましょう。

  • 増加運転資金
  • 法人税等・消費税の納付(中間納付を含む)
  • 借入金の約定返済(契約で決まった毎月の返済)

まとめ:まず何から始める?

直近の決算書があれば、次の手順で確認できます。

  • 決算書から売上債権・棚卸資産・仕入債務・年間売上高・年間売上原価を拾う
  • 3つの回転日数とCCCを計算する
  • 過去3期分を並べて、CCCが伸びていないかを確認する
  • 来期の売上計画を入れて、増加運転資金を見積もる
  • 納税と借入返済を加えて、月別の資金繰り表を作る

関連記事:倉庫に眠っている現金/現金は何か月分持つべきか

決算書をもとに自社のCCCと必要な運転資金を計算し、資金繰り表の形でご提示します。当事務所へお気軽にご相談ください。

※本記事は2026年10月時点の情報に基づく解説です。回転日数には複数の計算方法があり、金融機関の分析とは数値が異なる場合があります。税金の期限は、申告期限の延長の特例を受けている場合などで異なります。